たとえばそれが始まりだったとして



◇◆◇


ミーティングが始まっても、何故ヒロはあんな事を言ったのか、そればかりが頭を占めて、考えれば考えるほど、生まれた不安は大きくなる一方だった。大丈夫だと言い聞かせても、その度にヒロの言葉がちらついて、待っているのが彼女なだけに、どうしても不安が拭いきれない。彼女の笑顔を思い浮かべると、焦燥感がせり上がってくる。胸騒ぎが、する――。

ミーティングが終わると同時に、俺は教室を飛び出した。



◇◆◇



「え、眞鍋、くん……?」


何が起こってる――?


「付き合ってよ」


目の前にいるのは、だれ――?


「ねえ、小春ちゃん」

さっきまでの人の良さそうな眞鍋君はどこにもいなかった。

艶やかな表情を浮かべてねっとりした視線を向けてくる眞鍋君の言葉には、やわらかさの欠片も感じられない。

「あの時、なんで俺が小春ちゃんの名前知ってたか、わかる?」

そんな眞鍋君を見たくなくて、下を向いてただ首を振る。

「じゃあ、なんで俺がわざわざ小春ちゃんのアドレス聞いてメールしたと思う?」

何も言えないでいる私に、眞鍋君はクスリと笑った。

「じゃあ教えてあげる。今こうして小春ちゃんを押さえつけてるのも、みんなみんな小春ちゃんが好きだから」

「うそだっ!」

思わず否定の言葉が口を出た。とってつけたような“好き”に怒りがこみ上げてくる。睨みつけるように眞鍋君を見据えた。

「信じてくれないの? 俺はこんなにも小春ちゃんを想ってるのに」

そんないかにも悲しいですみたいに弱々しく言ったって、全然悲しそうじゃない。むしろ楽しそうにすら見える。

「違う」

こんなの、違う。

好きとか恋とか、わからないけど。

でも、こんなの絶対違う。

だって、和巳さんがお姉ちゃんを見る目はもっと優しくて愛情に満ちていて、お姉ちゃんのことを想ってるんだって誰が見たってわかるもの。

それに――。