たとえばそれが始まりだったとして



「“友達”って桐原修一?」

すれ違いざまに腕を掴まれ、歩みが止まる。

「眞鍋君?」

見上げた横顔からは、表情を窺う事は出来なかった。ただ、口許だけはきれいなくらい弧を描いていた。

「最近、朝一緒に登校してるんだよね? 今日も桐原と帰るの?」

どきりと心臓が跳ねた。
見られていたのだろうか。私が桐原君と登校している事を眞鍋君が知ってたという事に驚きつつも、それなら話は早いと会話終了を試みる。

「うん、そうだよ。約束してるの。だから今日はもう」

「小春ちゃん、桐原のこと好きなの?」

けれども眞鍋君は私の言葉を強引に遮って、予想外すぎる事を口にした。

「え?」

一瞬だけ、何を言われたのかわからなくて思考が停止するもすぐに我に返る。

「ええっ!? あっ、いや! そのっ」

電光掲示板に文字が流れていくように、“好き”の二文字がリフレイン、脳内をぐるぐる走り回る。何を言い出すんだ眞鍋君は!

隣で眞鍋君が目を細め口元を釣り上げて笑みを深くした事に、すっかり動揺した私は気が付かない。

「好きじゃないならさ」

その瞬間。

物凄い力で腕を引っ張られたと思ったら、背中にやってくる、衝撃。手首を押さえつけられるように掴まれて。俯いた顔に、影が落ちる――。

そして耳を掠める微かな吐息に、誘われるように顔を上げると、



「――俺と付き合ってよ」



妖艶に微笑む眞鍋君が、そこにいた――。