「じゃあ、どうして」
「ん、こいつらが粗い借金取りらしくてよ、店のばーさん襲ってたとこ見て気に食わなかったからよ」

彼女はやられた男の背中を踏む足に、更に体重をかけた。

「そのお婆さん、君の身内か?」

「いんや。見ず知らずの他人を助けた、だから正義の味方」

「……、でもここまできたら警察沙汰だな」

「あー。なんとかなるだろ」

適当だった。
何となく、その子との会話は面白かった。まだここに居たいかもしれない。

「しゃーねーな、片付けるか」

「意外と綺麗好きなんだな」
「ま、暴れたのはあたしだからな」

「俺も手伝うよ」

「おにーさん物好きだね」
女の子が嫌な笑い方をした。
 店に入って、取り敢えず倒れた棚を起こす。

 「君、何歳?」
「セクハラか貴様」
「毒舌だね……」
「あたしは御年十七だ」
「え、同い年──」

同じ十七の女の子が、こんなゴロツキ数人を?
そんなの三人がかりでも無理だ。

 「……死んでないよな」
「運がよければな」
逃げればよかった。
 この子、一体何者なんだろう。
ちらっと女の子の方を見ると、今まで気づかなかったが、かなりの美人だった。
 拾い上げたノートを落としかけてしまった。

「何やってんだ」
「あ、いや、君ってさ」
「ん?」
「結構、胸大きいね」
間違えました。
「……セクハラでもなければ痴漢か」
「それは誤解だ」
本当にこんなつもりでは……!

 「お前、どこの学校だ?」
急に女の子のターン。

「……泉森だけど」
「なら都合がいい」
「都合?」

「お前、今日からあたしの恋人になれ」