「ふん、背徳者が反吐が出るわ店員襲ってまで金と消しゴムが欲しいのかコラ」

 たった今、俺は駅前の文房具屋にて起こった惨劇を見てしまった。

二千九年十一月十三日金曜日午後六時、決して人の少なくない駅前の文房具屋にて。
それを見てしまった。

そこには図体のでかい男が数人悶えながら這いつくばっていて、皆腹部から出血していた。
要するに立派な事件だった。

自分は今逃げたら巻き込まれないのに。
何故か動けない。
唖然としていて、目が離せなかった。
 十七年生きてきて、こんなことは一度もなかった。
このシーンに恐怖を感じない。
むしろ興味が湧いた。
まるで、自分が映画館の席に座っているように。


そんな惨劇の舞台となる文房具屋に平然と立って男達を見下ろしていたのは、セーラー服を着た女の子だった。

危険じゃないのか、そんなところにいたら。
そう思ったが、よく見ると彼女には全然危険な環境ではなかった。

セーラー服が血塗れだったからだ。
おまけに右手にはつるはし。
酸素に触れて黒くなった服の染み。赤に濡れた凶器を持っている。
単純に彼女が犯人。
犯人は彼女。

その子『の存在』が、危なかったのだ。

 青に近い黒の長髪を優美に揺らし、倒れていた男の背中を踏みにじった。

まず思い浮かんだ言葉。

鬼畜──だ。