「いつまでこうしてんだよ。店から電話があったぞ。アンタが来ないと客が回転しないって」


「ふん……。アタシがいなくて困ってるようじゃ、あの子たちもまだまだね。

オネエのオの字も与えらんないわ」


「それだけアンタが必要だってことだろ」


「……え?」


「オネエマンとしてのアンタがな」


「……」



顔を上げた留美の目が、キラキラと薄明かりに滲んでいる。



「オトコに戻ろうかしら」



流川から視線をそらしたオネエマンは、


鼻水をすすってすねた声を出した。



「えっ?!」



驚きの声を上げたのは私。


だって、オネエマン……自分に誇りを持ってる人でしょう?


いいの?


てか出来るの?



「両親がいる間だけ、格好だけでもオトコのふりしてればあの人たちも文句ないでしょ。

帰ったらまた元に戻ればいい話なんだから」



言い捨てるようにつぶやくオネエマン。



「アンタたちの様子を見ていたらね、思ったわ。

オトコとオンナがいて、普通に恋をして、それが自然の原理なのよ。

アタシみたいなのはどうしたって特殊なのよ。

理解してもらえるわけがないんだわ」



ああ、それで……。


オネエマン、私たちがいちゃついてるように見えたから頭に来て飛び出したわけじゃなかったんだ。


理解してもらえないことに……


それが一番近い相手である両親にわかってもらえないことに……


悲しかったんだ。