「来てない? ああ、わかった。うん、ちょっと探してみるわ」
電話を切った流川は、
「アイツ、店に出てないんだってよ」
眉間にしわを寄せた。
「え? お店に行ってないの? 仕事に行くって出ていったよね?」
「ああ。どこに行ったんだアイツ」
オネエマンが無断欠勤だなんて。
そういうとこ、一番厳しそうなのに。
もしかして……。
「オネエマン、私たちがイチャついてるように見えて……それがそんなにショックだったのかな?」
「……さあな」
腕を組んだ流川は、夜景に目をこらした。
なにか考えてるみたい。
「仕方ねーな。探しにいくか」
「え?」
「部屋を貸してるのはオレだからな。その辺で凍死でもされたらオレが困る」
「探すって、どこを?」
「だいたいの見当はついてる」
「え? ホントに?」
「ああ」
そう言って立ち上がった流川は、
壁にかけてあったオネエマンのコートを手に取って、
自分の黒いコートを羽織って玄関にむかった。
「あ、待って。私も行く」
急いでコートを着た私も、流川のあとを追いかけた。