「今夜のところは仕方ないな」



流川の言葉を合図にして、話し合いは終わり。



「じゃ、アタシ仕事に行くわ」



留美が立ち上がると、



「あ、あたしも帰らなきゃ」



香穂ちゃんが立ち上がり、



「オレもバイトだ」



さらに流川まで立ちあがって。



「え? 流川、今夜バイトなの?」


「ああ、明日大学は午後からだから」



えええ……今夜は私、この部屋でひとりぼっち?



寂しいなぁ。




玄関先まで3人をお見送り。




「いってらっしゃい」



口にすると。



靴を履いた流川が振り向いて、



「何をしてる」



私の隣を見ながら眉間にシワを寄せている。



「なんでお前までそこに残ってるんだ」



なぜか私の隣で、一緒に3人をお見送りしている光太くん。



ホントだ。


……何してんの?



「オレはこのあと特に用事はないですから」


「は?」


「唯衣さんをひとりにするのは可哀そうだし、オレはここにいます」


「なに言ってんだお前」


「心配しないでください、唯衣さんはオレが守りま……」



笑顔で手を振りかけた光太くんの腕をぐいっと引っ張った流川は、



「お前も帰るんだ」


「あっ! 唯衣さんっ、助けて!」


「……」



あ然と小劇を見ていた私に、



「必ずカギをかけろよっ」



流川は妙に真剣な顔で言って扉をしめた。



「い、いってらっしゃい……」



引きつった笑いで見送った私だけれど。



香穂ちゃんの視線が、


この間もずっと流川に注がれていたのを見逃さなかった。



……オンナの勘、みたいなものを、久しぶりに感じた。