……けど。



「誰だお前」



流川の左手に、あっさりとつかまっている。



「こ、このっ! このっ!」



右手をつかまれた光太くんは、


爪が木に引っ掛かったネコみたいにじたばたと暴れてるだけで。



ぼう然とその様子を眺めていると、私に気づいた流川と目が合った。


その胸の中にはまだオンナの人がいて。




……ムカ。


ムカムカムカムカ!!



急に頭に血がのぼった私。


廊下を前のめりで突き進んで、流川に詰め寄った。



「流川っ。誰っ? そのヒト!」



私の剣幕に、オンナの人は目を丸くしている。


よく見ると、私と同い年くらいのオンナの子だ。



「流川っ!」



再び詰め寄ると、



「留美の妹だ」



光太くんをぶら下げたままで流川は言った。



「へ? オネエマンの……妹?」



マジで?


てか、どうしてここに?



首をかしげると、オンナの子は静かに口を開いた。



「あたしも、お父さんとお母さんが田舎から出てきたときに行ったんです、お兄ちゃんの部屋に。

そしたらお兄ちゃん……あんな姿で現れて……。

それで昨日、こっそり後をつけてきたらここについて。

流川さんに、お兄ちゃんに部屋に戻るように言ってもらおうと思って来たんです」



そこまで言うと、また顔をおおってしまったオンナの子。


その肩を、流川がぽんぽんと叩く。



なんかちょっと……ヤけるんですけど。