「そうカリカリすんなよ」



片腕を伸ばした流川が、私の髪に触れる。


子どもをあやすように柔らかく撫でられて。



う……。


そ、そんなんで騙されないんだからねっ。



ぱっと身を引くと、


流川は鼻先で短いため息をついた。



「知らなかったんだってよ、アイツの両親」


「知らなかった? って何を?」


「アイツの職業」


「職業?」


「ああ、職業というか、ナリか」


「ナリ?」


「息子を訪ねていったはずが、中から出てきたのがアレだったら、お前、どうするよ?」


「……あ」



もしかして、


息子がオネエマンになってるってことを知らなかったってこと?



「驚くだろ、普通に」


「驚くよね……」


「なにをふざけてんだって怒鳴られたんだってよ、オヤジに。

別にふざけてもいないし、これが今のアタシなんだって説明したら、

お袋さんはその場で泣き崩れたって言ってたな」


「そ、そうなんだ……」



ご両親が驚くのも無理ないよね……。


息子がオンナになってるんだもん。



まあ、それが完璧なオンナの人だったらまだしも……、


らぶりー留美の場合、性転換してるわけじゃないから、完全に女装だもんね……。


しかもゴツイから、相当な迫力だし。



「それでケンカか……」


「オトコに戻るまでここに居付いてやるって言われたんだと」


「オネエマンは……オトコに戻る気なんてないもんね」


「ああ。アイツ、気持ちはちゃんとオンナだからな」


「だよね」



らぶりー留美は怖いけど。


自分の仕事とオンナとしての感情に誇りを持ってることも知ってる。



いくら両親に怒られたって……、


そればっかりはオネエマンも譲れないよね。