「お前……なんだ、これ」



残り物を冷蔵庫にしまっていた流川は、


ケーキの箱を取り出して眉根を寄せた。



「あ、それね、ケーキ」


「アホ。それは見れば分かる。この食い方は何なんだって聞いてるんだ」


「贅沢食いしたらそうなっちゃった。あはは」



笑ってごまかす私を見て、流川はあきれた顔をした。



「汚ねー食い方すんなよ」


「出た。やっぱり」


「あ?」


「ううん、何でもない」


「ケーキもまともに食えねーのかお前は」



予想どおりだ。


絶対そう言われると思った。



でも。


怒られてるのに喜んでしまうあたり、光太くんが言うように私ってMなのかもしれない。



「流川、コーヒー飲む?」


「話をそらすな」


「そらしてないよ。それ、クリームは乾いちゃってるけどまだ食べれると思うからさ、一緒に食べようよ」


「これをか」


「うん。光太くんが持ってきてくれたケーキ、流川全然食べれてなかったでしょ?」


「……ったく。もったいねーし、食うしかねーだろ」


「で、コーヒーでいい?」


「いや、シャンパンにする。飲み足りねーし」


「シャンパン? あったっけ?」


「帰りに買ってきたんだよ、これ」



そう言って、冷蔵庫の奥の方からシャンパンを取り出した流川は、



「お前にも飲ませてやる。ただし少しだけだからな」



グラスを出して、ケーキの箱をテーブルに運んだ。