「え……? 本物?」



つぶやいた私に、



「遅いぞお前。何やってた」



そのヒトが、あきれたように言う。



「カギもかけないで何やってんだよ、バカ」


「バカ……」


「しかもなんだその格好は。こんな時間に雪で遊んでたのか? びしょびしょじゃねーか。バカ」


「バカ……」


「ったく。ホントにバカだな、お前は」


「バカ……」



バカバカ連発するこの人は、たぶん……、いや、本物の流川だ。



「流川?」


「なんだよ」


「どうしてここにいるの?」


「オレの部屋だからに決まってるだろ」


「そうじゃなくて。何でここにいるの?」


「だから、」



オレの部屋、と言いかけた流川は、



「お前、ケガしてんのか?」



私のヒザににじんでいる血に気がついたらしい。



「バカだな、ホントに」



近づいてきた流川が、ぽかんと口を開いた私の顔をまじまじと見下ろしてくる。



「流川だよね? 本物だよね?」



まだ半信半疑な私がつぶやくと、



「自分の彼氏も忘れたのか、アホ」



そう言って、私の頭に手をのせた。