……けど。



「な、なんで立ち止まってんの……?」



思わず、足がすくむ。



「もしかして……」



私が追いかけてることに気づいて……、逆に襲いかかってこようとしてるとか?



「うそ……やだ……怖い……」



私と泥棒のあいだにあるのは、降り続けてるこの白い雪だけだ。


襲ってこられたら、声だって積もった雪に吸い込まれてしまうかもしれない。



「る、流川……怖いよ……」



ポケットに伸ばした手がケータイをつかんでいることに気がついて、肩を落とした。


かけたって、流川は日本にいない。


いつでも、助けてくれるわけじゃないんだ。



「だ、大丈夫。きっと大丈夫」



じり、じり、じりと距離をつめてみる。


近づいた影をよ~く見ると、やっぱり赤い服を着てる。



「っていうか……、サンタクロース?」



右手にでっかい袋をぶらさげて立っているその姿は、


赤い帽子もかぶっていて、つけひげも付けてて、どう見てもサンタクロースの格好だった。



「サンタクロースが泥棒?」



なんてヤツだ!


クリスマスにかこつけて、いや、もう終わっちゃってるけどサンタの格好で泥棒に入るなんて!


子どもが知ったら泣くよ?



手にしたそのでっかい袋に……、流川宅のお宝たんまり入ってるんでしょ?!



「ゆ……許せんっ」



道路を勢いよく蹴った私は、サンタクロースめがけて突進した。