『ナオちゃんが日本にいないなんて信じられないわね……』
寂しそうなオネエマンの声が聞こえて。
「私もまだピンときてないんですけどね。でも……夜とか、急にすごく寂しくなります。クリスマスに一人ぼっちなんて初めてだったから余計に」
『よく行かせたわね、アンタ』
「……それが1番だって思ったんです」
オネエマン事件で思ったんだ。
口では突き放すようなことを言っても、強くて優しい糸で繋がっているのが家族なんだって。
『まあ仕方ないわね』
「……はい」
『カエルのことは後で香穂に聞いといてあげるわ』
「ありがとうございます」
『それから。アンタね、寂しいからって他のオトコに手を出したりするんじゃないわよ』
「し、しませんっ! 絶対にっ」
『そんなことしてみなさい。アタシが確実にナオちゃんのこと食うからね』
「取る、じゃなくて、食う、ですか」
流川の上に覆いかぶさってるオネエマン……
「ぜ、絶対にイヤですっ!」
またイヤな画を想像してしまった……。
そこは流川の位置で、
流川のところは私の位置なんだからっ。
……って。
それも照れる……。
『ナオちゃんが帰ってきたら必ずアタシにも連絡寄こしなさいよ』
「はい」
いつになるか分からないけどね……。
『じゃ、アタシちょっと寝るからさ』
「はい。すみませんでした」
電話を切った直後、強い風がびゅうっと吹きつけてきて。
「寒い。痛い。眠い……」
棒のようになった足を引きずって、見えてきたファミレスへ急いだ。