***


「あれ? 唯衣さん、今日って入ってましたっけ?」



今夜は光太くんと一緒のシフトだ。



「クリスマスなのに残念ですね」


「……そうだね」


「オレは予定もなにもないから別にいいけど……。唯衣さんは? 流川さんと約束ないんですか?」


「……うん。ない」


「なんか元気ないですね、どーしたんですか?」



うかない私の顔を心配げに見ている。



「また流川さんに怒られたとか?」


「……そうだったら良かったよ」


「え? 怒られた方がいいってことですか? 唯衣さんってやっぱりMですか?」


「……やっぱりって何? そうじゃなくて。流川、今いないから」


「え? いないって、マンションにいないってことですか?」


「マンションにいないっていうか、日本にいない」


「え? なんですかそれ?」



すっかり流川ファンになってしまった光太くんに事情を説明してやると、



「オレも見送りに行きたかったです……」



マジ泣きしそうな顔でうつむいている。



「あのね、光太くん? 泣きたいのは私だからね」


「そうですよね……。でもオレも泣きたいです」


「……気持ちはわかるけどね」


「引っ越しちゃったってことは、あといつ帰ってくるか分からないってことですもんね?」


「……そうだね」



そんなこと言わないでよ。


また……泣きたくなるじゃん……。