でも……仕方ないよね……。


まさかこのタイミングで「やっぱり行かないで」なんて言えないし。



「見送りに行くね」


「見送り?」


「うん。空港に」


「いや……来なくていい」


「え? なんで?」


「……」



うつむく流川。



「あ。もしかして私の顔見ちゃうと寂しいとか?」



わざと明るく言ってみる私。



「んなわけねーだろ」


「素直じゃないなぁ」


「うるせーな。せいせいするわ」


「……ひど……」


「とにかく。来ることねーよ」


「なんで?」



あといつ会えるか分かんないんだよ?



「見送りくらいさせてよ……」



半べそになった私に。



「お前のそういう顔、見たくねーんだよ」


「……え?」


「来たら絶対泣くだろ?」



困ったような顔で、流川が笑う。



「だからいい。来なくて」


「……泣かない」


「いや、泣く」


「泣かないから……」


「……」


「ね? ダメ?」



ぐっと、涙をこらえて見上げると。



「ホントだな?」


「うん」


「泣いたらすぐに追い返すからな」


「うん。泣かない」


「じゃあ……許すか」



仕方ない。そんな顔で少し笑った流川は、



「まあまあ強くなったな、お前」



片手で私の頭を引き寄せて、耳元に口づけた。



「うん」



ドキドキするよりも切なくて。



――この話がウソでありますように。



サンタクロースに……


カエルのことよりもそれをお願いしそうになった夜。



流川の肩越しに見えていた飛行機の明かりが、


ゆっくりゆっくり小さくなって、


雲の向こうに、消えていった。