何コールか目。



『もしもし? 唯衣さん?』


「あ、うん。ごめんね、今大丈夫?」


『大丈夫ですけど。どうしたんですか?』


「あのね、その……。カエルがいなくて」


『カエル? なんですか?』


「あ、ぬいぐるみの。あのでっかいカエルがいなくて」


『あー、カエルくん』



電話の向こうの香穂ちゃんは、あははっと笑った。



『あたしが連れだしたんですよ。クリーニングに出してあげようと思って』


「へ? クリーニング?」


『なんかすごく汚れてたし』


「そ、そうなんだ。ありがとう。で、今香穂ちゃんの部屋にいるの? カエル」


『それがぁ』



言葉を区切った香穂ちゃんは、



『わかんないんです』


「え?」



『あまりにもでっかいから途中で持って帰るのが恥ずかしくなっちゃって。

帰り道にあるどこかの店に出したのは覚えてるんですけど、それがどこだったか忘れちゃって。

ケータイいじりながらだったから、上の空だったのかなぁ』



「ええええっ!? でも、預り書みたいなのは残ってるでしょ?」


『それがぁ、無くしちゃったんです』


「うぇええ!?」


『ごめんなさい。探したんですけど見つからなくて』


「うそ……」



電話を切って、麻紀に事情を話すと。



「信じらんない。行方不明ってこと?」


「そうみたい……」



がっくし……。


肩を落とした私の背中を、麻紀がぽんぽんとたたいた。



「クリーニング屋、片っぱしから電話してみる?」


「そんな気の遠くなるようなことできないよ」


「じゃあ、香穂ちゃんになんとか思い出してもらうしかないね」


「うん……」



ごめん、カエル。


ずっと放っておいて。



心で謝って、ため息をついた。