「ガスをなめたらいけないよ、吉沢さん」


「え?」


「ガスがいっぱい充満したところに、ちょっとでも火の気が出ればすぐにボッと爆発するんだから。そりゃあ派手に。

前にも同じような光景を見たことがあるから分かるんだけどね」


「はあ」


「青木さん、部屋のドアを開けようと思って鍵を差し込んだらいきなり爆発したんだってよ」


「え? なんでですか?」


「さあね、よくわかんないけど静電気じゃないかね」


「静電気?」


「ほら、最近すごく乾燥してるだろ?」



うん。乾燥している。


今日は特に肌がチクチクして痛かったし。



「それが導火線になったんだよ、きっと。まあ、詳しいことはわかんないけどさ。

しかし玄関先でよかったよ青木さん。そっち側の壁はちょっとゆがんだくらいで済んだからね。

ガラス窓の多いベランダ側の壁が吹っ飛んじまったってわけだよ」


「じゃあ、ケガ人は……」


「誰もアパートにはいなかったみたいだからね。火も少し上がったけどすぐに消し止められたみたいだし。それだけがまあ、不幸中の幸いだけどさ」



よかった。ケガ人はいないんだ。



……って!


安心してる場合じゃないでしょ、この状況。