「あたし、引きませんよ?」



その顔も、ちょっと赤くなっている。


けど、きっぱりとそう言った香穂ちゃんは、



「障害があれば余計に燃えるタイプなんです、あたし」


「……」


「唯衣さんがまた誰でもいいようなそぶりを見せたら、その時は容赦しませんから」


「……そ、そんな」


「自信ないんですか?」



上目づかいでぐっと睨んでいる。


う……。


その目、アイシャドーがたっぷり乗った誰かに似てる……。



「流川は渡さないもんっ」



言い返すと、



「恋愛は自由ですから」


「う……」



それも、誰かとそっくり。



「何かでも、今は入り込む隙間なさそうだし。あたし、面倒なことはしたくないんです」


「……」


「壊れそうになったらまたおじゃましますけど」


「ひっ……」


「あたしがそれまで誰も好きにならなかったら、流川さんのこと、今度はもらいますからね」


「ひぃ……」


「行こう。光太くん。こんなバカップル放っといて」



つかつかと玄関に向かう香穂ちゃん。



「あ、あの。おじゃましました」



それを追う光太くん。



足音が消えて静かになると、



「ったく。お前ひとりでも手がかかるのに、色々考えて手を打つのも大変だわ」



私の頭をぽんと叩いた流川が笑った。


その顔を見てたら、なんだかチカラが抜けちゃって。



「流川……」


「ん?」



きゅっとしがみつくと、



「……ありがとう」



自然とその言葉が出てきた。



「ん」



そんな私のカラダを、なんだかんだ言っても優しく包んでくれる……、


大好きなこの人のそばにずっといたい、そう思った。