「……なにこれ……てか、どうなってんの?」



まるでドールハウス。


通りに面してる方の壁がない。


2階建ての6部屋、全部。



「…………」



なんなのこれ。


意味わかんないんですけど。



「吉沢さん!」



呆然と立ち尽くしていた私の隣に誰かが駆け寄ってきた。


顔を向けると、鼻息を荒げた後藤さん。



50代前半で独身、メタボ気味のお腹を気にしていて、最近ジョギングを始めたらしいこの人は、


2階の右端にある私の部屋のお隣さんだ。




「後藤さん……これ、どーなってるんですか?」



私が呆然としたまま聞くと、


後藤さんは大仏様みたいなパーマの髪をぐちゃぐちゃとかき回した。



「ガス爆発」


「へ?」


「ガス爆発したのよ、1階の青木さんの部屋で!」


「ガス爆発?」



なんだか、よくわかんないんですけど。