驚いた私は一瞬だけ流川の顔を見上げたけれど、すぐに下を向いて唇を結んだ。


つかまれてる肩が、痛い。



「こっち見ろよ」



流川が低い声を出す。



「見ろって」


「……」


「この間からお前、そうやって黙ってばかりだよな」


「……」


「聞いてんのか?」



両手で挟まれた顔を、ぐいっと上向きにさせられて。



「痛いっ……」


「言うこときかねーからだろ」


「……離し、て」


「オレの目を見て言え」


「……」


「なんで逃げんだよ」


「……」


「そうやって、いつまでも無視するつもりか」



両手をおろした流川は、



「負け犬だな、お前。それでいいのか」


「……」



なにも言い返せない私の背中を押して、ソファに座らせた。



「オレはもう我慢なんねーぞ。お前にも。そしてあいつらにもな」



消毒液と絆創膏を持ってきた流川が無言で私の指を握っている。



私はされるままで、


手際良く動く流川の長い指をじっと見ていた。