次の日。
お昼近くに目を覚ました私がリビングへ向かうと、
バイトから帰ってきていた流川がソファの上で眠っていた。
その姿に、なんとなく違和感をおぼえる。
……なんだろ。
何かが足りない気がする。
片腕を枕にして、お腹に手をのせた流川は、疲れ切ったように眠っていた。
起こさないように、そっとキッチンへむかった。
辺りには、リンゴの残り香がまだうっすらと広がっている。
「……」
流川が起きたら、ありがとうって言った方がいいのかな。
……ううん、たぶん無理だ。
顔を見ることさえも、うまく出来なくなっちゃってるし。
流川が目を覚ます前に、早いとこ部屋に引っ込んじゃおうと。
「ふぅ……」
ソファの上の流川にちらちらと視線を送りながら、コップに水を注いで飲みほした。
「よし。退散」
つぶやいたのはいいけれど、
何となく、もやもやする。
「……」
ご飯、作ってあげたほうがいいのかな。
……なんて気持ちがふっと湧いてきて。
だってさ、ほら、リンゴジュースにおにぎり。
作ってもらってるわけだし。
何かおかえししてやらないと、
「このオレ様が作ってやったんだぞ」
なんて、後からねちねち言われそうだし。
ここ最近ずっと、
流川のご飯、作ってなかったし。
……疲れてるみたいだし。

