振り向いた流川。


顔をのぞかせた香穂ちゃん。


ぴくっと動いた光太くんの手。



「上手くやってるじゃないですか、2人とも」



流川の隣に立った香穂ちゃんは、私にでも流川にでもなくそう言った。



「聞くつもりはなかったんだけど、そこまで来たら聞こえちゃいました。
あ、これどうぞ。お土産です」



手にしていた紙袋を玄関先に置いて、



「光太くんと食べてください」



にこりと笑う。



「いくら病人だからって、彼氏が帰ってくる前にオトコの人を部屋に入れちゃうなんて信じらんない」



急に真顔になった香穂ちゃんは、私を真っ直ぐに見据えた。



「そういう曖昧なことしてるから、ダメなんですよ」



なに……?



「見たでしょう? あたしと流川さんがキスしてるとこ」



なんなの?



「それなのに光太くんとそんな格好してるなんて。悔しくないんですか? それとも流川さんへの腹いせですか?」



動悸と震えが激しくなって。


崩れ落ちそうになるカラダを、光太くんがますます強く抱え込む。