リップクリームを塗りなおして外に出ると、


夕方5時過ぎの街はすでに真っ暗だった。



空気は乾燥していて、肌に当たる風はチクチクする。


11月最後の日。もう、完璧な冬だ。



「じゃ、ばいばい。唯衣」


「ばいばい、麻紀」



カラフルなコートが溢れるホームから電車に乗り込むと、


クリスマス企画の中吊り広告が目に入った。



「クリスマスか……。もうそんな時期なんだ」



なんとなく夏の日を懐かしく思い出しながら、


曇った窓に映る自分の顔をぼんやり見つめた。



このあと、


まさかあんなことになるとは微塵も思わずに。