「見たんだよ、私。流川と香穂ちゃんがキスしてるとこ」


「……」


「なんで?」


「……」


「なんでキスなんてしたの? なんで許したの?」


「許したんじゃねーよ。突然されたんだ」



さっきの光景が、ありありと頭に浮かんできた。



つま先立ちで背伸びをする香穂ちゃん。


確かに触れた唇。


好きな人が、他の人とキスをしている。


見せつけられた最悪な現場。



「突然って……」



奥歯を噛みしめてこらえたのに、やっぱり涙が出てきた。



「じゃあどうして2人で出かけたりしたの? そんなことしたから、されたんじゃん」


「クリスマスプレゼントを選びたいから一緒に来てくれって言われたんだよ」


「クリスマスプレゼント?」


「ああ。留美に贈りたいからって」


「オネエマンに?」


「ああ」


「……そんなの、」



口実に決まってるじゃん。


流川と2人きりになりたかった香穂ちゃんの作戦に決まってるじゃん。


もうじき部屋に帰ってくる私を避けるための。