「泣くなよ」
「……」
「言いたいことがあんなら、はっきりオレに言え」
「……」
「……なんで、」
躊躇するように、言葉を区切った流川は、
「要の部屋になんて行ったんだ」
涙をぬぐう指を止めて、瞳の奥に苦い色を浮かばせた。
視線に耐えきれなくて目をそらす。
唇をかんで横をむいた私に、流川はため息を漏らした。
「もしも何か起こったらって考えねーのか、お前は。
彼女がいたからまだしも……２人きりだったらどうしてたんだよ」
「……」
「何もないって保証はねーんだぞ」
「……」
「もう、こんなバカなことすんな」
「……」
……ズルイ。
ズルイよ、流川。
「……バカはそっちじゃん」
「……は？」
私にばっかり。
いつもいつもお説教して。
「流川はどうなの？」
「どうって？」
「私に言うことないの？」
「……」
「弁解すること、あるでしょう？」
震えてしまう声を、必死で抑えた。
