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「待って! 流川っ」



黒いコートの背中がどんどん遠くなる。


叫ぶ声は、届く前に冬の風にかき消されてしまって。



「流川っ……」



伸ばした腕を、誰かがつかむ。



ゆっくり目を開けると部屋の天井が見えて、


つかまれた腕の先に、流川の顔が映った。



「どうしたんだよ、大声出して」



不安げな面持ちで私の顔を見下ろしている。



「あれ?」



私……、要くんの部屋にいたはずじゃ……。



「ベッド?」



重い頭を動かして辺りを見渡してみると、


どうやらここは流川の部屋で、


私はベッドに寝かされているらしかった。



「電話が来たんだよ、要から。それでオレが迎えに行ったんだ」


「そう……だったんだ」


「なんの夢見てたんだ?」


「……え?」


「待って、て」


「あ……」


「居るだろ、オレはここに」



流川の指が伸びてきて、私の目元をそっとぬぐった。