香穂ちゃんのお茶いれもスムーズになったものだ。


……なんて感心してる場合じゃない。



オネエマン事件からもう10日以上が過ぎようとしてるけど、


あれから……、香穂ちゃんはほぼ毎日のようにこの部屋にやってくる。



今日みたいにお饅頭を送ってもらったからとか、


テキストの問題に分からないものがあるからとか、


腕時計の調子が悪いから見てもらいたいとか、


いろんな理由をつけて。



追い返す理由もないし、


流川も特になにも言わないし、


それにここは私の部屋でもないし……


香穂ちゃんに対して、なにも言えない状態で。



たぶん、あのオネエマンの一件で、


本格的に流川に惚れてしまったと思われるわけで……。



流川だって、気づいてるはずなのに。


なにも言わないんだよね。



まあ……


香穂ちゃんが流川に告白したわけでもないし、


すんごい迷惑をかけてくるわけでもないし、


流川も私も、


香穂ちゃんの行動を否定する理由がないから何も言えないっていうのもあるけど……。



「唯衣さん、もう1個どうですか?」


「あ、ありがと」



なつっこい後輩の1人、みたいな感じになっちゃってるんだよね。