「コイツの言ってることは本当です。
オレも同じ店で働いてましたから分かります。
気配りもできるし、全員から頼られてる。
何より仕事に誇りを持っています。
そして自分にも。
オレは仕事に対する姿勢も人を見る目も、留美さんに教えられました」
姿勢を正した流川は、
「留美さんときちんと話してください。お願いします」
再び頭を下げた。
そして私も。
「本気なのか? その姿のままで生きることも、店を持ちたいってことも」
紅茶のカップをそっと持ち上げたお父さんが言った。
「ええ、本気よ。アタシにはもう、この生き方しかないもの。
中途半端な気持ちじゃない」
「お前の人生だからな。父さんや母さんが口を出すことでもないだろう。
だがな、さっきも言ったが苦労するのはお前なんだぞ」
「分かってる。でも大丈夫よ。苦労はこれまでにもしてきたもの。
これから先なにがあっても自分を信じて頑張るつもりよ。
だから……」
――分かって。
オネエマンも、深々と頭をさげた。
――ごめんなさい。
そう聞こえたような気がした。

