「留美さんはお父さんお母さんを裏切ったわけじゃない。

むしろ上京してからもずっと会いたくて、分かってほしかったはずです。

その証拠が、お母さんの名前ですよ、留美っていう」



涙目のお母さんが、うつむいている留美に視線を送った。



「もちろん恨んでるんでもない。

留美さんは申し訳ないって言ったんです。

オトコとして生んでくれたのに、そう生きれない自分のほうを責めているんです」



次から次にこぼれ落ちるオネエマンの涙は、


スカートにシミを作っている。



それを見ながら流川は小さく息を吐いて、確認するように言った。




「今は金さえあれば手術だってできます。

でも留美さんはそれをしない。

どうしてだか分かりますか?


心は女性でも、せめて身体は……

生んでくれた姿のままでいようとしてるからじゃないでしょうか」



オネエマンの目からは、大粒の涙がこぼれ続けている。


顔をおおったお母さんの指の間から、すすり泣く声が漏れた。


香穂ちゃんは流川の顔を息を呑んで見つめていた。



「認めてもらえませんか?

もちろん時間はかかると思います。

他人の問題じゃない、家族の問題ですから。

でもせめて、分かってもらえませんか、留美さんの気持ちを」



話し終えた流川は、


組んでいた指をはずして頭をさげた。



オネエマンの顔はもうぐちゃぐちゃだ。


そんな留美に、お母さんは持っていた自分のハンカチを差し出した。



それを受け取った留美は、


口元を押さえて、声を殺して泣いていた。