蝉が一生懸命鳴いている。

知っていたのだろうか。

澄みきった空の下,あの明るい太陽に照らされるのが,たった7日間だという事を。



小学校を過ぎたくらいから人気は無い。

まだ昼の3時頃だというのに,その日もやはり人影はなかった。

私と,その後ろを歩く人を除いては。


後ろを歩く人に見覚えは無かった。

この辺の住人ならみんな知ってる。

おじいちゃん,おばあちゃん,お兄ちゃん,お姉ちゃん,みんな友達だ。


『最近引っ越して来た人かな?』


初めはその程度にしか考えず,私はそのまま歩き続けた。


足音がいきなり早くなり,私をそのまま追い抜く。

やっぱり知らない人だ。

いくつくらいだろう。なにせ小3の私には,6年生でさえ凄く大人に見えたから。

大人のお兄さん...そんな印象だった。


細い道はくねくねしていて先が見えない。

お兄さんもすぐに見えなくなった。