「うん…再度おやすみなさい」

「…おやすみなさい」

『寝ようか』とは言ったものの、完全に起きてしまった頭では、なかなか寝付けずにいた。

…タバコ吸ったら起こしちゃうかな…

何気なく彼女を見ると、彼女は既に寝息を立てていた。

彼女を起こさないように、彼女の足元に座った後、タバコに火を点けた。

「…瞬くん」

突然聞こえた彼女の声に、体が小さく飛び跳ねた。

「…っくりした…何?」

「…私、キスされた時、傷付いて無かったよ」

「え?でも、泣いてたじゃん?」

「…恋なんかしないって思ってたのに…社内恋愛禁止なのに………禁じられた恋って辛いよね」

「そ…それって…」

「おやすみなさい」

頭まで布団をスッポリと被り、言葉を遮る彼女。

…社内恋愛禁止って嘘なんじゃないのか?春樹さんは嘘だって言ってたよな?どう言う事だ??…

頭の中に浮かび上がる疑問。

疑問の答えが出る事は無く、タバコを揉み消した。

テーブルに置いてあった飲みかけのお茶を一口飲み、大きくため息をついた。

『社内恋愛禁止』

必要以上に重く伸し掛かる言葉。