心の距離

下の名前を覚えられていない事が、寂しく思えたが、今はそんな事を気にして居られない状況。

彼女の手から携帯を取り、文字を打った。

‘瞬だよ’

小さく頷いた後、携帯を膝の上に置き、二人でメニューを覗き込みながら注文した。

素直に楽しめない状況だったが、彼女の為を思うと逃げ出す事は出来ない。

飲み物といくつかのつまみがテーブルに届き、少し飲んだ後、男が口を開いた。

「いつから付き合ってんの?」

「最近」

タバコに火を点けた後、短く言い放った。

「最近っていつだよ?」

「最近は最近だよ」

「うさん臭いな?お前さ、ことみの事知ってんの?普通の男なら、ことみと付き合おうと思わないぜ?」

「つうか、この状況の方が普通じゃねぇだろ?」

「確かにな。何か信じらんないんだよなぁ…」

「何がだよ?」

「ことみ、コイツすげぇタイプだろ?背高いし、見るからにワイルドでゴツい体付だし、俺と正反対。そう簡単に好みの男と付き合えてたまるかよなぁ?」

言葉に驚きながら彼女の顔を見ると、彼女は顔を逸らしながら小さく呟いた。

「…自分以外に興味無いくせに」

「興味無かったら一緒に住まないだろ?ホントわかって無いな」