静まり返った事務所の中、パソコンのキーボードを叩く音だけが、やけに響き渡る…

「…用が済んだなら帰って良いですよ。お疲れ様です」

手を動かしながら冷たく言い放つ彼女。

彼女の言葉で、自分の中の何かが弾け飛んだ。

「…何も済んでねぇよ。ついて来い」

「仕事中です」

「黙ってろ」

彼女の腕を掴みながら言い放ち、彼女を引き摺るように会社を後にした。

何も言わずに引き摺られる彼女。

江川さんの口から真実を話させないと、彼女に信じて貰えない…

強引に彼女が昔働いていたパチンコ屋に向かい、店の中に引き摺り込もうとした。

「ま、待って下さい!私、お店に入っちゃいけないんです!」

「何で?」

「退社してから5年間は出入り禁止なんです!」

「本人の口から違うって聞かないと信じないだろ?」

「…でも、私用で規則を破るのは最低です」

「どうしたら信じて貰える?ことみが信じないから、こんな真似したんだろ?」

黙ったままうつむいてしまった彼女。

張り詰めた空気の中、背後から自動ドアの開く音が聞こえた。

「神田さん…?」

聞き覚えのある声に振り返ると、泣き出しそうな表情をした江川さんの姿。