心の距離

『もしかして』と思っていた気持ちは、『社内ルール』の名の元にあっけなく砕け散った。

あれだけ大島さんの言葉を、『クビになるから』と否定し続けていた彼女。

罰を覚悟で彼女に自分の気持ちを伝えたら、彼女はきっと否定の言葉を述べるだろう。

結果のわかってる相手に、勝負を挑む程虚しいものは無い。

無理矢理勝負を挑み、予想通り負けたとしても、同じ会社に勤めているせいで会わない訳にはいかない。

万が一、勝負に勝ったとしても、彼女と居る所を見られたら、恐らく何らかの罰が待っているだろう。

ため息をつきながらミーティングを終え、更衣室に移動した後、タバコに火を点けた。

ため息混じりに煙を吐き出すと、ヒデが声をかけてきた。

「瞬、みんなで飯行こうぜ」

「後で行く」

「夕べ寝て無いもんな。いつもの店だから、ちょっと寝たら来いよ」

「ああ」

力無く返事をし、ただ呆然とタバコを吸い続けた。

まるで、彼女が離れてしまうように、いくつもの足音が消えて行くのが聞こえる。