心の距離

出て来た千円札を手に取り、適当な台に座り、スロットを打ちはじめた。

タイムリミットは午後8時まで。

時間と金額を決めていれば、大きく負ける事は無い。

勝っている時でも、翌日の仕事が辛くなるから必ず9時までには帰る。

自分の中で決めたルールをきっちり守りながらしばらく打ち、時計を見ると、午後8時過ぎ。

出ていたメダルを箱に詰め、景品カウンターの横にある、メダル用ジェットカウンターに流すと、ことみちゃんが慌ててカウンターの中に飛び込んで来た。

横を通り過ぎた瞬間、清潔感溢れる香りが鼻をくすぐる…

出て来たレシートの裏にサインをし、レシートを僕に渡そうとする彼女。

黙ったまま景品カウンターを指差すと、ことみちゃんは景品交換をしてくれた。

はじめて間近で見た彼女は、遠目で見る以上に色が白く、全く化粧はしてなかった。

「大が8枚と小が3枚です。あまりが13枚ありますが…」

「マイルドセブンのスーパーライト…」

指定したタバコを取り、両手で差し出してくれる彼女。

綺麗に切り揃えられた爪と、少し荒れてる指先。

…この業界長いのかな?パチ屋って結構手荒れしそうだからな…

差し出された景品を受け取り、ヒデに声をかけた後、景品交換所に向かった。