心の距離

店の端にあるスロットコーナーからヒデを見付け出し、隣りの席に座りながら聞いた。

「なぁ、あんな子居たか?」

「え?ああ、ことみちゃん?1月に入ったらしいぜ?研修中だけ早番だったらしい。大島さんが言ってたよ」

「ことみちゃん?…前にいたさつきって子、辞めたんだ」

「客と付き合ってたのがバレてクビになったって。パチ屋って意外に厳しいよなぁ~。風俗業に入るのにさぁ~。ことみちゃん、超堅いらしいぜ?大島さんが毎日携帯の番号聞き出そうとしてたらしいけど、今だに教わって無いらしい。あの人もいい年してしつこいよな。3ヶ月間、毎日聞き出してたらしいぜ?」

「ふーん…」

小さく返事をしながら立ち上がり、両替機の前に立った。

ポケットから財布を取り出し、入っていた1万円札を取り出すと、背後から大島さんの声が聞こえてきた。

「ことみちゃん。ご飯食べに行こうよ~」

「クビになりたくないからダメです」

「内緒にすれば良いじゃん?」

「いずれバレます」

「じゃあ、せめてお茶だけでも行こうぜ」

「食事もお茶も同じです。いい加減諦めて下さい」

…ホント堅いな。堅いっつうか、ハッキリ言い過ぎてキツいかも?…