「…すいません。仕事中は集中します」

「遅刻しないから良いけど、怪我しないようにな?俺で良かったら相談に乗るぞ?」

「ありがとうございます。気持ちだけで大丈夫です」

小さく返事をすると、1年後輩の洋介が車に乗り込み、現場近くにある海に向かった。
海に着いたのは午前5時。

明け方はまだ寒い時期なのに、サーフィンの支度をする春樹さんと洋介。

…ホントタフだよなぁ。ちょっと尊敬…

「瞬、ちょっと行って来るな。あれだったら、車の中で寝てろよ?」

「はい」

春樹さんに小さく返事をし、助手席から見える海を眺めた。

ゆっくりと、山と海の堺から昇って行く朝日を眺め、小さくため息をついた。

…隣に彼女が居たら最高なのにな…

ため息をかき消すようにタバコに火を点け、昇って行く朝日を眺めていた。

ゆっくりと昇って行く太陽を眺めていると、江川さんのした事を思い出した。

彼女がした事は最低最悪の行為だと思う。

けど、江川さんが何も話さなかったら、未だに鳴る筈の無い電話を待っていただろう。

最低最悪の行為を暴露した彼女に、少しだけ感謝しなきゃいけないような気もした。