携帯が震え、慌てて姿勢を正しながら携帯の小さな窓を覗き込んだ。

小さな窓に映し出される“ヒデ”の文字。

ため息をつきながら携帯を耳に当て、小さく声を出した。

「何?」

「寝てたんか?」

「いや…何?」

「今さ、梨恵達と、駅前のカラオケに居るんだけど…」

「行くと思うか?」

「だよなぁ…。来る訳ねぇよな。」

ため息混じりに呟いた後、誰かに僕が行かない事を告げる、ヒデの遠い声に耳を疑った。

「…とみちゃん、ごめんね。瞬は来ないって」

「ちょっ!ちょっと待て!すぐ行く」

「え?マジで?珍しい…何かあったか?」

ヒデの言葉も聞かず、黙ったまま携帯を畳み、服を着替え、髪型を直した後、慌てて家を飛び出した。

もうすぐ彼女に会える…

もうすぐ愛しい人に会えると思うだけで、自然と胸が弾み、走ってカラオケ店に向かっている自分が居た。