心の距離

「その台、直んないよ」

彼女に声をかけたのは大島さん。

「え?そうなんですか?」

驚いた表情の彼女に、大島さんが笑いながら話していた。

「古いから基盤自体がダメになってるんだって。マネージャーが言ってたよ」

「あ!この台の事だったんだ!申し訳ありません。直らないみたいなんですけど…」

心底申し訳無さそうに告げてくる彼女に、小さく呟くように告げた。

「…こっちこそすいません」

騒がし過ぎる店内では、彼女に小さな声が届く筈も無く、大きな罪悪感に襲われながら席に着いた。

結果は1万円のマイナス。

彼女と話せた事はプラスに感じたが、彼女を困らせてしまった事の方が、マイナスの金額よりも遥かに大きい。

…業務的な会話意外の話がしたい…

高望みとも取れる願望を胸に帰宅し、ベッドに潜り込んだ。