心の距離

…もう冷めちゃったか…

ため息をつきながら肩の力を落とし、熱くなる目頭を拳で抑えつけた。

「ホントに綺麗な景色だね」

――!?――

突然聞こえた彼女の声。

驚きながら顔を上げると、眩しそうに目を細めている彼女が視界に飛び込んだ。

「な…なんで?…夢?」

「夢にしたい?夢にしたいなら、消えてあげる」

「…本物?」

「ホントに酷いよなぁ。『好きだけどサヨナラ』とか、『本物?』とかさ。何にも聞かないで逃げちゃうんだもん。ズルイよね?」

ニッコリと笑い、朝日を眺めながら話しかけて来る彼女に、戸惑いながら聞いた。

「何でここに?」

「本当に凄い景色だね。凄い暖かい」

「…質問に答えてくれるかな?あ…春樹さんに聞いたのか」

「違うよ。事務員だし、ちょっと調べればすぐにわかるよ」

「…移動の事も知ってた?」

「なんとなく気付いてたけど、夕べ社長からちゃんと聞いたよ。…私もね、移動になったんだ。
…聖が会社に来ちゃって、辞表出したら『都内に居たら、同じ事の繰り返しになるから』って、社長が移動させてくれたの。昨日の送別会、私の送別会でもあったんだ。瞬くんには内緒にして貰ってたの」