心の距離

うつむきながら小さく告げた後、目頭の熱さに堪え切れず、一粒の涙がこぼれ落ちた。

涙を飲み込むようにグラスを空にし、グラスが空になっては、目頭が熱くなった。

何かを話している春樹さんの声も聞こえず、朦朧としながらグラスを見詰めていた。

「…寝ろよ」

「はぁ…」

冷たく言い放つ春樹さんに、力無く答える事しか出来なかった。

ゆっくりと目を瞑ると、彼女が夢に現われた。

暖かい朝日を浴び、彼女と小指を絡ませながら話してる幸せな夢。

ゆっくりと目を開けると、春樹さんの家の天井が視界に飛び込んだ。

「起きたか?」

「はい。…すいませんでした」

「最後みたいな言い方するな。…後悔しないようにな」

「…もう帰ります」

ゆっくりと起き上がり、自宅に帰った後、シャワーを浴びた。

大きくため息をついた後、部屋に戻り、最後の荷物を段ボールに積めた。

…最後の思い出、作りに行こう…

段ボールの端に戯れつく猫を眺め、彼女に会いに行く決意を固めた。

「…じゃあな。ことみ」

猫の頭を強く撫で、段ボールを玄関に運ぶと、母親が心配そうに告げてきた。