…早く当たり引いてくれ!…

頭の中で強く思えば思う程、寂しくなっていく財布の中身。

軍資金ギリギリで確率変動を引き、ホッと胸を撫で下ろした。

「失礼します」

清潔感溢れる香りと共に聞こえた彼女の甘い声。

慌てて顔を向けると、彼女は驚いた表情の後に、ニッコリ笑いかけてきた。

…台の事話さなきゃ!…

そう思った矢先、彼女は手元にあった空き缶を回収し、あっと言う間に去ってしまった。

一度目の作戦は失敗に終わったが、今は確率変動中。

次の大当たりが確定している状況で、チャンスはまだある。

企みに近い心境の中、やってきた大当たり。

当たりは来たが、彼女では無い従業員が箱を交換しに来た。

…世の中甘くねぇよな…

ため息をつきながらタバコに火を点け、当たりが終わった後、コーヒーを買いに席を立った。

「調子どうだ?」

ヒデの声に顔を向けながら、自販機のボタンを押した。

「確変中だよ」

「最近パチンコばっかだな?スロットはやんないのか?」

「今はな?今日も彼女来ないのか?」

「居るよ。隣りで打ってる。また荷物持ちやらされるよ…早く振って欲しいな」

「…いろいろ頑張れよ?」

「彼女居ない瞬が羨ましいよ。今だけな?」