心の距離

空っぽの頭のまま、自分の口からこぼれた言葉に、少しだけ驚いた。

首に回した腕を解き、黙ったまま背中に手を回す彼女。

二人の激し過ぎる鼓動が、ハッキリと耳に響く…

「ただいま~!ことみちゃん、ごめんね!」

空気の読めなさ過ぎる母さんの声に、苛立ちながら部屋に飛び込んだ。

…あ、ヤベ。置いて来ちゃった…

ため息をついた後、リビングに戻ると、彼女だけでは無く、ヒデの姿までもが視界に飛び込んだ。

ソファの隅に座る彼女の隣に、当たり前のようにピッタリとくっついて座るヒデ。

僕の顔を見ると、二人の距離は少しだけ離れ、ヒデがため息混じりに聞いてきた。

「よう。どっか行くのか?」

「…いや?どうしたんだよ?日曜は梨恵と一緒じゃ無いのか?」

嫌味ったらしく、梨恵の事を聞き出そうとする自分。

「アイツなら買い物だよ。キリが無いし、ボーナス集られそうになったから、呆れて一人で帰って来ちった。そこで真理子さんと会ってさ、ことミンが居るって聞いて来たんだ」

「ふーん…母さんは?」

「風呂掃除」

何故か勝ち誇った口調で話し続けるヒデと、苛立ちを押し殺しながら冷静に話す自分。