心の距離

本当に言いたい事はこんな事じゃなかった。

どんな状況でも、本音を隠し、別の言い方をしてしまう自分が嫌になる…

真っ赤な顔をしながらうつむく彼女。

ため息をつきながら冷蔵庫に手を掛けると、彼女は僕の首に腕を回してきた。

「…辛い思いさせてごめんね」

小さく告げながら踵を上げ、唇を重ねてくる彼女。

冷蔵庫から手を離し、彼女を強く抱き締めた。

過去に見た夢が現実になった瞬間、彼女の言葉が頭を過ぎった。

『傷付くのも、傷付けるのも嫌?』

傷付いても良い…

傷付けても良い…

彼女と裸で抱き合い、一つになりたい…

彼女と心の距離を近付けたい…

切なる思いを叶えるように、彼女のシャツの中に手を忍ばせ、滑らかな背中を直接抱き締めた。

「…ダメ」

息を荒げながらうつむき、小さく告げてくる彼女。

背中を撫でる手を止めずに、彼女の額に唇を当てながら聞いた。

「…どうして?」

「…キッチンだし、真理子さん帰って来ちゃう」

「…すげぇ辛いんだ。…ことみの心で癒して欲しい」

「でも…」

「…俺の部屋に行こう。…母さんが帰って来るまで、辛い事忘れさせて欲しい」