恋するキモチ

職場に戻ると、残っていた仕事に取りかかる。終わった頃には、すでに0時を過ぎていた。

「さてと、帰るか」

幸いなことに、職場から家までは歩けない距離ではないので、成田は携帯を確認した後、少し早歩きで家へと向かった。


『お前もいい年なんだ』


久しぶりに言われた気がした。
それこそ、30代も後半に差し掛かった頃には、課長から見合い話を持ちかけられたりもしていた。


ま、どれもうまくいかなかったがな。


思い出して小さくため息をついた。
決して高望みをしているわけではないのだが。それでもやはり、こんな仕事をしていると、嫌がる女性もいるわけで、事件が起これば呼び出しで約束をドタキャンすることにはなるし、定刻通りに必ず終われる訳ではないから約束もしづらくなるから、結果的に疎遠になっていく。


で、気がつけばこんな年まで独り身なわけで。


なんて事を考えていると、いつの間にかマンションに到着していた。

「明日からまた、忙しくなりそうだ」

小さく呟くと、成田はそのままマンションの中に入っていった。