恋するキモチ

その日、成田と三井は出張中に溜まっていた内勤業務に追われ、残業を余儀無くされていた。
京子は後ろ髪を引かれる思いで、お先に失礼します、と言って先に上がった。


成田さん、かっこよかった…


はぁ、と小さく息を漏らしながら、一人、うっとりとした顔で浮かれた足取りで帰っていると、不意に、マンションの下で見知らぬ女性に声をかけられた。

「あ、あの。杉本京子さんですか?」

女性は自分の方に向いていた。自分の知り合いではない(と思う)。だが、キョロキョロと辺りを見回してみるが、自分意外に人がいないので、多分、自分に声をかけているのだろう。
というか、自分の名前は杉本京子だし。

「私、ですか?」

念の為聞いてみる。
知らない人で、しかも何故か、自分の事を知っているなんて、少し気味が悪い。

彼女は少し困惑した顔をしながら、小さく頷いた。