恋するキモチ

「ね、京子ちゃんって警視総監とどういう関係なの?」

登庁してすぐに、山下がこそこそっと京子に聞いてきた。
山下だけではない。警視総監と一緒に若い女刑事が出勤してきたのだ。今や周囲の噂の的になっている。

「…友達のお父さんなんです」

項垂れる京子。


わかってた…わかってたのよ。
こういうことになるって。


だから、断った。
のに、希美の父に逆らえず、そのまま車に京子を押し込められて、一緒に出勤することになり、こんな羽目になったのだ。

「え、友達のお父さん!?」

山下が叫ぶ。
周りで聞き耳を立てていた他の同僚も、ひそひそと何かを喋っていた。

「昨日、友達と一緒に飲んでて、まぁ、ちょっと飲みすぎまして…泊めてもらったんです。ここからその子の家、近いんで」

ため息交じりに京子が言う。

「朝、たまたま出る時間が一緒になっちゃって…それで…」

山下はあはは、と乾いた笑いを浮かべた。