恋するキモチ

「な、おい!京子!?」

叩かれた左の頬をさすりながら、追いかけようとする洋司を、希美が止めた。

「洋司、あんたもう無理だよ。あきらめな」

希美の言葉に、洋司はなんでだよ、と叫ぶ。

「地雷踏んだからだよ。それに多分、京子はもう、洋司のこと嫌いな奴に分類しちゃったから」

言われて洋司はさらに憤慨する。

「なんでだよ!あいつが俺にしたことの方がひでーじゃねーか!なのになんで俺が」

「京子は二股なんてかけてないし、何より、京子の大好きな成田さんをおっさん呼ばわりしたんだもん」

そう言って、希美はくいっとお酒を一気に流し込んだ。

「優、私たちのお勘定、これで足りる?」

希美はカウンターに残された一万円を指さしながら優に聞く。

「ええ、大丈夫ですよ」

それじゃこれでお願いね、と言って、希美は席を立つ。

「京子のこと、長い付き合いなんだから、よく知ってるでしょ?気の毒だとは思うけど、もう、あきらめた方がいいよ」

希美は洋司の肩をぽんと叩くと、そのまま店を出て行った。