「聞いて聞いて!奇跡が起こったの!」

親友の希美に、はしゃぎながら電話をかけた。

『なに?一体』

呆れたような口調の希美に、私は少し、不満を感じてしまう。

「なによー、テンション低いなぁ」

『あんたが高すぎんのよ』

面倒くさそうに言う希美に、私は小さなため息が出た。

『…で?こんな非常識な時間に、わざわざ電話してくるくらいだもん、何があったの?』

くすっと笑いながら、優しく聞いてくる。私はぱぁっと笑顔になって答えた。

「あ、あのね!捜査1課に配属が決まったの!」

『はい!?』

希美の驚いた声がキーンと響く。

『捜査いっ…マジで!?』

「まじまじぃ〜」

信じられない、といったうめき声が、電話越しに聞こえてくる。

「これで、憧れのあの人に会えるんだぁ」

うっとりとした顔で少し遠くを見つめる。

『あぁ…成田さんね』

希美に言われて、一気に顔が熱くなる。

「明日が初登庁なんだけど、会えるかなぁ!?」

今から心臓がドクドクと大きな音を立て止まらない。

『さぁ…ま、今は特に大きな事件も抱えてないみたいだし、会えるんじゃない?』

パチパチっと何かを叩くような音が聞こえた。

「あぁー…どうしよ、緊張するよぉ!!」

『はいはい。おすぎ、明日が初出勤なら、とっとと寝なさい』

子供をなだめるように、希美が言う。

「無理。だってコーフンしちゃって」

『成田さん、遅刻とかそういうのだいっ嫌いな』

「おやすみ、希美。グッナイ!」

希美が言い終わる前に、ブチッと携帯を切ると、目覚ましをいつもより1時間早くセットして、布団に潜り込んだ。