「…はずなんだけどな」

ずきずきと痛む頭をわしゃわしゃとかく。
見慣れない部屋に明らかに自分のものではないすスウェット。(しかもちょっと小さい)
居酒屋のあとのことが全く思い出せずに困っていると、キィっと扉の開く音がした。

「あ、先輩。おはようございます」

聞こえてきた声に、成田は思わず絶句した。


まさか…!


「早く着替えちゃってくださいよ。遅刻しちゃいますから」

そう言って、きれいなシャツをいそいそと着替える山下の姿があった。

「なんで俺はこんなところにいる」

不機嫌そうに言うと、けらけらと笑って山下が答える。

「やだなぁ、先輩。覚えてないんですか?」

「…何をだ」

布団から出て、近くに脱ぎ散らかっていた自分のものと思しきシャツを手に取り着替え始める。

「昨日の飲み会のあと、杉本に俺と付き合うか!って言ったら、苦笑いしながら無理です~って言われて、うちにきてやけ酒につき合わせてきたんじゃないっすか」

その言葉に、ボタンをかけていた手がぴたりと止まる。

「ま、杉本の奴も結構飲んでたみたいだし、昨日のことは忘れてますって」

ぽんぽん、と肩を叩いてくる。
成田の顔はこの世の終わりともいえるような表情をしていた。